プリセプター制度とは、新人看護師(プリセプティ)に先輩看護師(プリセプター)がマンツーマンで指導を行う教育制度です。
入職したばかりのプリセプティの不安は想像以上に強く、「できなくてツライ」「職場に迷惑をかけている」など悩むこともあります。そんなプリセプティの教育係であるプリセプターの仕事内容ややりがい、初めてプリセプターになる看護師へのアドバイスを紹介します。
- 1問目/3問中
- あなたの性別は?
この記事の内容
新人看護師にとって、プリセプター制度の役割とは?
プリセプター制度(プリセプターシップ)とは、新人看護師(プリセプティ)ひとりひとりに先輩看護師(プリセプター)がつき、マンツーマンの指導を行う教育制度です。プリセプターはプリセプティとともに患者さんにケアの提供を行います。そのなかで、看護の基礎となる看護技術や看護記録、アセスメントの仕方についてお手本を示します。
また業務内容だけでなく、職場での対人関係の相談や業務を行う上での身体・精神的な健康管理についても助言を行います。プリセプターはプリセプティの一番身近な、一番話しやすい相談相手としての役割もあります。
看護師は資格取得までに実習や国家試験を乗り越えてきましたが、実際就職をすると現場とのギャップに戸惑う「リアリティショック」状態になることは少なくありません。このギャップを埋めるため、プリセプター制度を導入する病院は多くあります。
プリセプターの主な仕事内容5つ
プリセプターの主な仕事内容について紹介します。
1:シャドーイング
入職後数日は、プリセプターの業務にプリセプティがついて見学する、シャドーイングを行います。
シャドーイングは「看護師としての姿」をプリセプティに見せる場です。普段の業務のように淡々と仕事をこなすのではなく、なぜこのようなスケジュール立てや回り方をしたのか、なぜ患者さんに対してこの行動や発言をしたのかについてプリセプティに説明しながら行う必要があります。
看護師の行う動作ひとつひとつには根拠があります。
その根拠をプリセプティが知ることで、根拠をもった看護を実践することができます。
2:1日のスケジュールを調整
シャドーイング期間が終わると、プリセプティは患者さんの受け持ちが始まります。患者さんと関わる前にまず、1日のスケジュールを立てる必要があります。
この患者さんはどんな疾患がありどんな治療をしているのか、今日の検査や治療の予定、ケアの方法、時間調整、またそれらの根拠についてプリセプターと確認します。疾患ついてわからないところがある場合は一緒に調べ、治療と結びつけられるようにします。
また、スケジュールを立てる中でプリセプティにとって初めて行う業務(採血や点滴などの処置)もでてくると思います。
初めての業務があるかどうか聞き、初めて行う業務は事前に手順書を一緒に見て確認します。
3:看護業務を一緒に行う
スケジュールを立てたら、プリセプターはプリセプティとペアで動きます。プリセプティは患者さんの前に立つと緊張してしまい、調整したことができなくなることもあります。できないことは手伝い、時に見守りながら患者さんが安全に過ごせるようにサポートをします。
業務がひとつ終わったら次の業務の確認を行います。初めて行う業務はまずプリセプターがお手本をみせます。
プリセプティは手順書とプリセプターの動きを確認しながら実際の現場を見て学びます。
また、プリセプティは業務に一生懸命になることで時間管理を忘れることがあります。今何時なのか、次の業務は何時までに終える必要があるのかを伝えていくことが大切です。
4:振り返り、次回の目標設定
1日の業務が終了した後、または余裕があればひとつひとつの業務を終える毎に、プリセプターはプリセプティの振り返りを行います。プリセプティに今日1日動いてみてどうだったかを聞きます。
「できなかった」「ごめんなさい」「疲れてしまった」など、マイナスな感情が聞かれることもあると思いますが、できたことを中心に頑張りを認めます。
わからなかったことは説明し、できなかったことはどうすれば良かったかを一緒に考えます。また朝立てたスケジュールと実際の業務を照らし合わせ、時間がかかったことは次はもう少し長く時間をとるようにするなど、より効率的に動けるような導線を考えます。
それらから次回はどう動いていったらよいかの目標を立てます。
1日の業務を終えたプリセプティは疲れているため、振り返りはあまり長くならないようにしましょう。
5:プリセプティのメンタルケア
プリセプティの不安は想像以上に強いものです。「できなくてツライ」「職場に迷惑をかけている」など悩むこともあります。そんなときにプリセプターからの暖かい声かけや優しい対応があると、プリセプティの不安は和らぎます。
例えば、朝のスケジュール調整の時に「昨日は眠れた?朝ごはん食べられた?」と声をかけたり、業務中に「バタバタして大変だけどちゃんと動けてるよ」と認めたり、振り返り時に「頑張ったね、今日はゆっくり休んでね」と褒めるなどです。
プリセプティを見守っているよ、ということを態度で示し、プリセプティの居場所をつくるのもプリセプターの重要な役割です。
【経験者に聞いた】プリセプターのやりがい
わたしはプリセプターの経験が何回かあります。
プリセプターに任命される度に「わたしなんかで大丈夫だろうか」「自分の業務が滞らないだろうか」と不安になります。実際にプリセプターとして動くと、業務が増えることによって忙しくなってしまったり、プリセプティの落ち込みに自分も同調して落ち込んでしまうなど悩むこともありました。
しかし当たり前にやっている業務の根拠を改めて考えたり、忙しい中で効率的に動く方法を考えるなどで、自分の看護の質を上げることができました。またプリセプティとチームの架け橋になることで、チームとして働くということを実感をすることができます。
プリセプティだけでなくチームから頼られる存在になることは、自分の自信につながりました。何よりプリセプティの成長を一番近くで見守ることができるのは、とても楽しく、やりがいがあります。
プリセプターシップ解消時に「〇〇さんがプリセプターで良かったです!」という言葉は自分の看護師人生に大きく影響を与えたと思います。
初めてプリセプターになった看護師さんへのアドバイス5つ
初めてプリセプターになった看護師さんへのアドバイスを5つ紹介します。
1:プリセプティの気持ちを思い出す
プリセプティは、患者さんや先輩看護師、医師、疾患、処置、看護技術、さまざまなものに対して「不安」があります。慣れてくるとそれらに「不安」を持っていることを忘れがちです。
プリセプターには自分がプリセプティであった時期があるはずです。その時のことを思い返すことで、不安を和らげる発言や態度をとることができます。
2:他のプリセプティと比べない
プリセプティが何人かいると、
- 「他のプリセプターはプリセプティとうまくやっていけてるのに…」
- 「他のプリセプティは私のプリセプティよりできるのに…」
と比べて悩むこともあるでしょう。しかしプリセプターにもプリセプティにもそれぞれ個性があるからこそ、それぞれ自分らしい看護を行うことができます。自分自身とプリセプティを客観的に見つめ、個性を認めていきましょう。
3:プリセプティを認める、褒める
プリセプティは慣れない環境で必死に働いています。その中で「失敗して怒られるのではないか」「自分は役に立っていないのではないか」という不安もあり、心の余裕はあまりありません。
「学生じゃないし大丈夫だろう」「入職してもう数か月たったんだからできるだろう」などといった自分だけの物差しでみていては、よりよい関係性を築くことはできません。
できたことは当たり前とせずに、褒め、認めることはプリセプティの自信につながります。
4:自分の成長も認める、褒める
プリセプティの教育に集中していると、自分自身を認めることを忘れてしまいます。プリセプターに任命されるとき、管理者は「プリセプターにも一緒に育ってほしい」という思いがあります。プリセプティと関わる中で初めて気付いたり改めて考えることは、自分の成長の糧になるでしょう。
自分の成長を認め、褒めることは、プリセプターとしてのモチベーションにもつながります。
先輩からプリセプターとしての働きをフィードバックしてもらうことも1つの手です。
5:皆で見守っているということを忘れない
プリセプターだからといって、自分ひとりでプリセプティの教育をしなければならないということはありません。
プリセプター自身まだまだ未熟な点があり、悩むこともあると思います。プリセプティは病棟のチーム全体で育てるものです。
先輩や他のスタッフに頼り、プリセプティの成長をサポートしましょう。
プリセプターになるには?
プリセプターになるために必須の資格はありません。厚生労働省が作成した「新人看護職員研修ガイドライン」には、実地指導者に求められる能力として次の5つが挙げられています。
- 新人看護職員に教育的に関わる能力
- 新人看護職員と適切な関係性を築くコミュニケーション能力
- 新人看護職員の置かれている状況を把握し、一緒に問題を解決する能力
- 新人看護職員研修の個々のプログラムを立案できる能力
- 新人看護職員の臨床実践能力を評価する能力
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000049466_1.pdf
プリセプターは、看護師長や主任などの管理者によって任命されてなることができますが、病院によってプリセプターを担うための経験年数はさまざまです。
看護師2、3年目でプリセプターをする場合、経験年数が近いため、特にプリセプティのメンタル面で共感しあえるといったメリットがあります。
また、経験年数10年以上の熟達者をプリセプターにする病院もあります。知識や技術が多いこと、また経験年数が2、3年目の看護師より余裕をもって関わることができるといったメリットがあります。
まとめ
プリセプター制度は、プリセプティが看護師として自立して働くためのサポートをする制度です。
看護業務だけでなく、体調管理やメンタル面でも関わっていくことが必要です。
プリセプティを育てることは大変なこともありますが、その経験は看護師としての大きなステップアップになります。プリセプティの成長にやりがいを感じると自分の自信につながり、看護がもっと楽しくなるでしょう。