良い職場とは何か。
1日の8割を職場で過ごす私たちにとって、職場はもはや日常生活の一部と言えます。それは看護師にとっても同じこと。看護師が転職するのは珍しくなくなった現代において、1年や2足らずで職場を変えて行く看護師も多いといいます。
医療現場というチーム体制でみれば、職場の人間関係が良いことが、しがらみのないいい職場環境と言えますが、自宅から通いやすい、勤務希望が通りやすい、上院自体の評判が良いなど、求める『いい職場』の条件は異なってきます。
本記事では、17年目のベテラン看護師に、いい職場の条件とは何か、理想とする病院像を決めるポイントについてお聞きしました。
この記事の内容
①あなたが職場に求める譲れない条件を明確に文字にする
私は看護師になって、今年で17年目になります。
いまの職場は9年目になりますが、職場を変えるときは悩みました。
それまでの私は、2、3年で職場を変えるということを繰り返していたからです。
合わない、合わない、と職場を変えていましたが、いろいろ職場を変えた結果、自分はこんな職場がいいというのがわかってきて、いまの職場を選びました。
- 患者さんとゆっくり関わりたいから療養病棟がいい
- 自宅から車で通いやすいところがいい
- 他にやりたいこと(副業)があるので勤務希望が通るパートがいい
- 時給は前の病院よりいいところがよい
- 患者さんやご家族からの評判が比較的よい
そうやっていくつか条件を考え、それに合った病院を選んだのです。
人によって『いい職場』の考え方は違う
あなたにとっていい職場とはどんな職場でしょうか?
私とは違うのではないでしょうか?
求める条件が違うのだから、私にとっていい職場が、あなたにとっていい職場とは限りません。
誰にとっても「いい職場」はないのです。
あなたが職場に求める譲れない条件を明確に文字にすること
職場選びもお見合いと一緒です。
相手がどんな人で、どんな価値観を持っていて、一緒にやっていけるか最初に見定める必要があります。
相手もあなたを見定めます。
あなたはどんな人で、何ができる人で、どんなことがしたいと思っているのか。
すべての人に好かれる人間がいないように、すべての看護師にとっていい条件の職場などないでしょう。
お互いの条件が、すべてあうことはないかもしれません。
でも譲れないものはあるはずです。
これならやっていけるかもと妥協できるなら一緒になるのもいいし、妥協が多ければ多いほど、あとでこんなはずじゃなかったと後悔することになりますから、そんな人とは一緒にならないことです。
それを最初に考えてみましょう。
②病院のルールを知ろう
「こんなにがんばっているのに認めてもらえない…」
そう思うこともあるかもしれません。
たとえば、サッカーの試合でボールを手に持ってゴールをしたらどうなるでしょう?
反則で退場になります。
でもボールを手に持ってゴールしても、バスケットボールやラグビー、ハンドボールなら点数が入り賞賛されます。
同じことをしても、退場になったり賞賛されたりするのです。競技によってルールが違うのだからあたりまえですよね。
どんな病院にもルールがある
仕事にも同じことが言えます。
朝早く来てがんばって仕事を始めても、何度も同じ失敗をしたり、患者さんからクレームが多かったりすれば、病院のルールから外れているのです。
まずはルールを知ることです。
病院にはどんなルールがあってどんな人材を求めているのでしょうか?
入職するまえに、そのルールを把握しておきましょう。
病院はやりたいことをやる場ではない
少々厳しい言い方をすれば、病院はあなたがやりたいことをやる場所ではないのです。
病院の理念や思いを実現するために、病院のルールに則って自分の役割や責務を果たす場所です。
だから最初にあなたが職場に求める条件を明確に文字にして、あなたの思いと病院の思いの方向性が合っているかを確認しておく必要があるのです。
自分の役割や責務を果たしていると、おのずと自分のやりたいことができるようになっていきます。
③病院を辞めるのはいつでもできるが、続けるのは今しかできない
「辞めたい…」
そう思うこともあるでしょう。私もたまにあります。
でもそんなときは、「いつでも辞められるのだから、あと1ヶ月頑張ってみよう」と思ってみてください。
どんな病院にもいい面と悪い面がある
私の勤める病院にも、転職してきて「前の病院はこうだった、ああだった」と、いやで辞めてきたはずの病院の自慢?をする看護師がいます。
どこの病院にもいい面とよくない面はあるものです。
嫌だと思うとよくない面ばかりに目がいってしまいますが、辞めて初めてよかった面に気づくということもよくあります。
他の病院で働く医療者と交流をもったり、趣味に打ち込んだり、視野を広げてみることをお勧めします。
いま見えている面以外のものが、見えてきます。
病院は、いつでも辞められる
転職なんていつでもできます。でも、続けるのは今しかできないのです。
それでもどうしても辞めたくなったら、しっかり辞める準備をしましょう。
いまの条件よりよい条件で次の職場が見つかることが理想ですよね。
だからいま働いている病院で、身につけられるスキルは身につけられるだけ身につけて、自分の糧としておきましょう。
意味を持って続けることができるなら、あなたはさらに成長できます。
無理のしすぎは禁物|心身を壊す前に休むのも大事
でも、意味を見出せず無理して続けることは、身体だけでなく心を壊してしまいます。
まともに眠れない、ご飯が食べられない、普段できていることができない、突然涙が出てくるなどは、身体からのSOSです。
無理せず休みを取りましょう。
休みをとったあと、新たな環境になりそうな職場を調べてみるのもいいです。
また休んでいる間に、病院が職務内容や環境を調整してくれるかもしれません。
その結果、今の職場が働きやすくなるということだってあります。
いきなり辞めるのではなく、続けるためにいまは休みをとるという選択肢もあることを覚えておいてください。
まとめ
理想とする病院像が、あなたに見つかることを願っています。
- あなたが職場に求める譲れない条件を明確に文字にする
- 病院のルールを知ろう
- 辞めるのはいつでもできるが、続けるのは今しかできない
後閑愛実(ごかん・めぐみ) |
正看護師。BLS及びACLSインストラクター。看取りコミュニケーター
2002年群馬パース看護短期大学卒業、2003年より看護師として病院勤務を開始する。以来1000人以上の患者と関わり、看取ってきた患者から学んだことを生かして「最期まで笑顔で生ききる生き方をサポートしたい」と2013年より看取りコミュニケーション講師として研修や講演活動を開始。現在は病院に非常勤の看護師として勤務しながら、研修、講演、執筆などを行っている。雑誌「月刊ナーシング」で連載中『まんがでわかるはじめての看取りケア』の原作執筆を担当。 著書に『後悔しない死の迎え方』(ダイヤモンド社)がある。 後閑愛実WEBサイト |
イラスト:なかもと ゆき |
多摩美術大学卒業後、フリーの作家・デザイナー・イラストレーターとして活動。デザインフェスタはじめ様々な展示に多数出店。
2018年「月刊ナーシング」で『まんがでわかるはじめての看取りケア』の連載を開始。イラストを担当。『後悔しない死の迎え方(後閑愛実著)』では、挿絵を担当。 現在YouTubeで「ゆき味アートチャンネル」を開設、ものつくりの楽しさを発信している。 チャンネルURL:https://www.youtube.com/ |