この記事の内容
「なにかおかしい」に気づく
「なにかおかしい」というのは第一印象が悪いということです。
あなたもきっと常に意識しなくても見ていることだと思います。
それを言語化すると…
第一印象(初期評価)
- 外見(意識レベル 言語反応)
- 呼吸仕事量(努力呼吸や肺音と気道音)
- 循環(皮膚色)(蒼白、まだら模様、チアノーゼ)
パッとこれらを見て「なにかおかしい」と判断したら、具体的に何がどうおかしいのかを判断して行きます。
医療職だったら、そのうち意識せずとも常に第一印象はみれるようになっていくと思います。
たとえば、病院の歓送迎会参加したときの話です。
気づいたら店の前の道路で、サラリーマン風の男性が倒れていました。
私は、同僚数人と一緒に男性に近寄りました。
「大丈夫ですか?」
男性の肩を叩くと、起きたけど足どりがヨロヨロ。
店の前の椅子に座らせてお水飲ませてあげました。
30分前からいたらしく気づいていた人もいたらしいけど、ただ酔っ払って寝てるんだろうと思って声をかけなかったそうです。
(まぁ関わりたくないという心境もわからんでもないですが…)
声をかけますか?
私も全ての人に声をかけることはしません。
そこ(道路)で生活している人もいるし…
道路に倒れていた男性は、第一印象が悪かったから声をかけました。
呼吸は正常、でも爪が紫色、顔色が悪い…
肩を叩いたら反応あり、橈骨動脈(手首)に触れると脈が速い…
酔っ払ってはいましたが、受け答えはでき、緊急性はなさそうだったので救急車は呼びませんでしたが、あのままほっといていい状態でもなかったと思いました。
しばらくしたら落ち着いて「大丈夫です」って言って帰っていきました。
まあ酔っ払って寝ていたのでしょう。
気をつけて呑んでねーって感じです。
「なにかおかしい」
そう気づいた時は、第一印象が悪いということです。
どこがどうおかしいのか言語化することはとても大事です。
言語化することで医師への報告もその後の処置もスムーズにいくようになるからです。
「なにかおかしい」の「なにか」を言語化する
これらを実際に体系的に学ぶコースがあります。
看護師向けの生命危機アセスメント強化プログラム「PEARS(ペアーズ)・プロバイダーコース」です。
生命危機状態にある実際の小児(患児)の動画を見て、観察・評価の訓練を行い、心停止に陥らせないためのバイタルサインのアセスメント手法を学びます。
動画で見る症例で示されるのは小児(患児)ですが、アセスメント手法は成人患者を含め、すべての患者さん、傷病者に使える普遍的なテクニックです。
患者さんの急変は、8時間前に何らかの変調があるといわれています。
PAERSではその変調に気づき、迫りくる心停止を回避する技術を習得します。
そのために「なにかおかしい」という直観的な気づきやその後の対応、ベテラン看護師が経験的に自然と行っている観察・思考パターンを、新人看護師に身に付けてもらう内容になっています。
- 「なにがどうおかしいのか」
- 「それにはどんなことが考えられるか」
- 「そのあとどうすればいいのか」
それを体系的に学んでいきます。
私は療養病棟で働いているのですが、病棟にいる患者さんはしゃべれる人ばかりではありません。
自分の症状を言葉でうまく話せない小児(患児)の観察の方法は、同じように自分の症状を言葉でうまく話せない病気の高齢患者さんにも役立つものです。
私もこのコースを受けたのは2018年ですが、患者さんを看る視野が広がり、状態が悪くなる前に気づき対応することができるようになった気がします。
ぜひ新人看護師には受けてもらいたいコースですし、ベテラン看護師も自分が普段やっている方法を言語化し新人看護師に教えるために受けて欲しいコースです。
PEARSの受講条件
- 小児、乳児のCPRとAED操作が出来ること
- 質の高いCPRが出来ること
(AHA-BLSヘルスケアプロバイダー相当の技術)
AHA規約ではPEARS受講に際し、AHA-BLSを必須にはしておりませんが、上記の2点は必須条件となります。
BLSスキルを一度は習得した事があるのを前提にコースが進行し、CPRスキルを練習するコースではないのでご注意ください。
評価と報告、心停止の認識時は即座にBLS!
「なにかおかしい」の「なにか」を言語化できるようになると、リーダーや医師への報告もスムーズになります。
報告で大事なのは、結論から言うこと。
それからその根拠を伝えていきます。
だらだらと報告されても、報告された方は「だからなに?」と困ってしまうでしょう。
反応がなかったり重症度や緊急度が高ければ、即座に緊急コールをし人を集める必要があります。
「コードブルー」「5555」「2999」など病院によってスタッフを呼ぶ緊急時のコールがあります。
自分の勤める病院の緊急コールはなんと言うか、確認しておきましょう。
助けを呼んで、頚動脈に触れて脈の確認、胸の上下を見て呼吸をしているか確認します。
口をパクパクしたり、あえぐような呼吸をみせる実際には呼吸ができていない状態の死戦期呼吸を、正常な呼吸と勘違いして胸骨圧迫を躊躇してしまう人がいるのですが、迷ったら胸骨圧迫!
反応があったらやめればいいだけです。
⭐︎圧迫と人工呼吸の比率
- 成人は30対2
- 小児と乳児は
- 1人で対応する場合は30対2
- 2人で対応する場合は15対2
⭐︎圧迫の深さは
成人 5cm〜6cm
小児 約5cm(胸壁の厚みの1/3)
乳児 約4cm(胸壁の厚みの1/3)
これはBLS講習の回でもお伝えしました。
詳しくはそちらをご覧ください。
昔、一緒に働いている内科の医師が、心筋梗塞で勤務中に倒れたことがあります。
意識はあったので、自分で検査の指示を出し、心電図を読んで心筋梗塞と判断。
救急車で他の病院に運ばれていきました。
検査の指示できましたが、その日に心臓カテーテル検査ができる先生が、倒れたその先生だけだったのです。
知り合いの緩和ケア病棟の看護師も、カンファレンス中に医師が心停止起こしてAED使ったことがあると教えてくれました。
突然の心停止はいつどこでだれがなるかわかりません。
看護師だったらいつでも対応できるようにしておきましょう。
まとめ
- 「なにかおかしい」に気づく
- 「なにかおかしい」の「なにか」を言語化する
- 評価と報告、心停止の認識時は即座にBLS!
状態が悪化するまえにその後の対応へつなげられるように、「なにかおかしい」にいち早く気づける評価・思考パターンを身につけましょう。
PEARSプロバイダーマニュアル AHAガイドライン2015 準拠 AHA:アメリカ心臓協会シナジー2018
PEARSが受けられるサイト
後閑愛実(ごかん・めぐみ) |
正看護師。BLS及びACLSインストラクター。 看取りコミュニケーター2002年群馬パース看護短期大学卒業、2003年より看護師として病院勤務を開始する。以来1000人以上の患者と関わり、看取ってきた患者から学んだことを生かして「最期まで笑顔で生ききる生き方をサポートしたい」と2013年より看取りコミュニケーション講師として研修や講演活動を開始。現在は病院に非常勤の看護師として勤務しながら、研修、講演、執筆などを行っている。雑誌「月刊ナーシング」で連載中『まんがでわかるはじめての看取りケア』の原作執筆を担当。著書に『後悔しない死の迎え方』(ダイヤモンド社)がある。後閑愛実WEBサイト https://www.megumitori.com/ |
イラスト:なかもと ゆき |
多摩美術大学卒業後、フリーの作家・デザイナー・イラストレーターとして活動。
デザインフェスタはじめ様々な展示に多数出店。 2018年「月刊ナーシング」で『まんがでわかるはじめての看取りケア』の連載を開始。イラストを担当。 『後悔しない死の迎え方(後閑愛実著)』では、挿絵を担当。 現在YouTubeで「ゆき味アートチャンネル」を開設、ものつくりの楽しさを発信している。 チャンネルURL:https://www.youtube.com/ |